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2026/06/05

DEIの視点から考える外国人労働者の安全衛生管理

DEIの視点から考える外国人労働者の安全衛生管理

少子高齢化の進行により、我が国の労働力人口は構造的な減少局面にある。その補完として外国人労働者は年々増加し、多くの産業で基幹的戦力となっている。

それに伴い、外国人労働者の労働災害も増加しており、千人率等の規格化した数字で比較すると、日本人労働者よりも外国人労働者の災害率が高い業界も見られる。外国人労働者の安全衛生をどのように担保するかは、大きな課題となってきている。

これを受けて、厚生労働省は、「第十四次労働災害防止計画(十四次防)」で外国人労働者の安全衛生確保を重点項目として掲げ、アウトカム指標として、外国人労働者の死傷年千人率を2027年までに労働者全体の平均以下とすることを目標とした。

外国人労働者の労働安全衛生上の課題は、一般には、言語の違いによるコミュニケーションの課題と、生まれ育った文化に基づく行動様式の違いに帰着するように考えられる。

「言語の違いによるコミュニケーションの課題」は、言語の壁によって、作業手順や危険情報を十分に理解されない場合に安全衛生が担保できないことである。そのため、十四次防では、母国語に翻訳された教材や視聴覚教材を用いる等、外国人労働者に分かりやすい方法で災害防止の教育を行っている事業場の割合を、2027年までに50%以上とすることをアウトプット指標として設定した。

「生まれ育った文化に基づく行動様式の違い」の問題は、文化的背景による無意識な行動様式の違いに起因する不安全行動である。空気を読むなどの日本人固有の行動文化は、海外の人には理解が困難である。「言わなくてもわかるでしょう」というのは海外には通用しないことを理解しておく必要がある。

さて、上記は、一般的な外国人労働者の安全衛生の課題と対策の話であった。ところが、実は、演者は外国人労働者の安全衛生の問題は、外国人労働者のコミュニケーションではなく、その事業所の安全衛生の構造的な問題が、外国人労働者雇用により顕在化してきたにすぎないケースが多いと考えている。たとえば、作業のルールや作業手順書がしっかりと整備されておらず、属人的な業務を行っていた場合、外国人労働者とのコミュニケーションに支障が生じた場合に、その問題が顕在化してくるわけである。持続的で有効な安全衛生対策のためには、マネジメントシステムのように包括的な体制を構築する必要があるが、その整備が行われていないのが真の課題であるというわけである。

人的資本経営においては、企業の人材の持つ能力を最大限に発揮して成果を最大化することを考える。そのためには、一人一人の能力を把握して適所適材を進め、能力を最大に発揮してもらうのが、最も合理的・効率的であるというスタンスに立つ。そこには、人によって能力や個性が異なることを受け入れて、その個性を生かす人事を考える発想が流れている。DEI(Diversity, Equity & Inclusion)の視点で外国人雇用を考えると、外国籍は、年齢や性別と同様に多様性の一要素にすぎず、一人一人の個性として考える視点が重要である。すなわち、「外国人労働者を含めた多様な人材が安全に能力を発揮できる仕組みづくりの一環」として捉えるのである。

Googleの「プロジェクト・アリストテレス」の研究は、高い成果を上げるチームの最重要要因が「心理的安全性」であることを明らかにした。心理的安全性が担保されていると、メンバーが否定や不利益を恐れずに、発言・質問できることが可能となるが、これを実現するためには、各個人の価値観や違いを認めたうえで、活き活きと働ける職場を実現することが大前提である。安全について考えてみると、心理的安全性が確保されている職場では、危険を感じたときに「止める」「報告する」「確認する」ことを躊躇なくできる安全文化が醸成されていき、それが結果として安全につながることになる。

講演では、DEIの観点で、外国人労働者の雇用を人的資本経営の中でとらえることを説明し、その中で労働安全衛生を進める考え方を解説する。

筆者情報

NAOSHコンサルティング代表

中原浩彦 氏

大手石油企業に30年勤務後、労働安全衛生コンサルタントおよび技術士(化学、総合技術監理)として、NAOSHコンサルティングを起業。外資系企業における経営分析や労働安全衛生管理等の経験・実務を踏まえて、企業の自律的な労働安全衛生対策支援や技術アドバイスを行っている。また、労働安全衛生総合研究所の特任研究員も兼務しており、CREATE-SIMPLEや保護具マニュアル等の厚生労働省施策を、技術面から支援している。
大手石油企業に30年勤務後、労働安全衛生コンサルタントおよび技術士(化学、総合技術監理)として、NAOSHコンサルティングを起業。外資系企業における経営分析や労働安全衛生管理等の経験・実務を踏まえて、企業の自律的な労働安全衛生対策支援や技術アドバイスを行っている。また、労働安全衛生総合研究所の特任研究員も兼務しており、CREATE-SIMPLEや保護具マニュアル等の厚生労働省施策を、技術面から支援している。

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