令和4年5月に厚生労働省令が改正・公布され、新たな化学物質管理のあり方が示されました。これまで事業場では、特別則(有機則、特化則等)にて対象とされる化学物質の個別規制を遵守することで法対応を行ってきましたが、今後は特別則対象物質以外の全ての化学物質について自律的に管理することになりました。
化学物質の自律的管理とは、危険有害性のある化学物質について国が管理の基準を設定し、事業者は事業場にてその基準以下で化学物質を取り扱う義務を負うが、その対応方法は事業者に任せるというものです。
また自律的管理の対象は広く、化学物質を製造または取扱う事業場および譲渡または提供を行う事業場等においては、事業場の規模や業種にかかわらず全ての事業場が自律的管理の実施対象となっています。
ここでは、化学物質を製造または取り扱う事業場の職場では何を実施しなければならないかについてみてみます。以下の次項が実施できているか点検してみてください。
- 事業場で製造・取り扱っている全ての化学物質について危険有害性を把握する。
全ての取扱い物質のSDSを入手できていますか。取り扱い物質が、リスクアセスメントの対象物質か、皮膚等傷害化学物質の対象物質か、がん原性物質の対称物質か、濃度基準値やばく露限界値が設定されているか等把握できていますか。 - 化学物質管理者を選任し、事業場内に周知する。
- リスクアセスメントを実施する。
化学物質には危険性(爆発・火災)と有害性(中毒、発がん性)がありますが、両方の性質を併せ持つ化学物質についてはどのようにリスクアセスメントを行っていますか。
有害性のリスク評価は、ばく露濃度を実測する方法ですか、クリエイトシンプル等の数理モデルを使用したばく露濃度を推定する方法ですか。 - リスクアセスメントの結果に基づき、職場で労働者がばく露される程度を最小限度(濃度基準値以下あるいはばく露限界値以下)とするために、ばく露低減措置を検討し実施する。
- SDSを使い、労働者に化学物質の危険有害性を教育し、リスクアセスメントの結果を労働者に周知する。
- 保護具を使用している職場では、保護具着用管理責任者を選任し、保護具の適切な選択、使用、そして保管について管理させる。
- 取扱い化学物質に皮膚等傷害化学物質に該当する物質があるかを確認し、取り扱っている場合は、皮膚への直接接触を防止するため適切な保護具を選択し、使用させる。
- 化学物質の管理状況について(安全)衛生委員会の付議事項とし、労働者に周知する。
皆さんの事業場では既に、リスクアセスメントは実施しているし、化学物質管理者および保護具着用管理責任者も選任済と思いますが、化学物質の自律的管理の進捗状況はいかがでしょうか。
これまで、化学物質の管理は、事業場で誰が管理するのか曖昧で、安全管理者或いは衛生管理者が適宜行っていたか、現場管理者や作業主任者任せが実態だったのではないかと思います。
今後、この自律的管理では、化学物質管理者が化学物質管理の全体をコントロールする権限を与えられたキーマンとして管理を推進することになります。その化学物質管理者の職務は、事業場における化学物質の管理に係る技術的事項の管理とされ、具体的には以下の管理事項があります。
- リスクアセスメント対象物のラべル表示や危険有害性情報(SDS)の通知に関すること
- リスクアセスメントの実施に関すること
- リスクアセスメント等の結果に基づく措置の内容及び実施に関すること
- リスクアセスメント対象物を原因とする労働災害が発生した場合の対応に関すること
- リスクアセスメントの結果の記録の作成と保存、およびその周知に関すること
- リスクアセスメントの結果に基づくばく露低減措置等に関する記録と保存、および労働者への周知に関すること
- 労働者に対する必要な教育に関すること
以上のように、化学物質の自律的管理に関する業務は多岐にわたり、化学物質に関する専門的知識もある程度必要となることから、化学物質管理者と保護具着用管理責任者任せにするのではなく、事業場全体で組織的に取り組む必要があると考えます。
筆者情報

労働安全コンサルタント(化学)、労働衛生コンサルタント(衛生工学)
(日本労働安全衛生コンサルタント会副会長 東京支部所属)
高橋 明彦 氏